1.創業の経緯

 昭和50年代、若き商社マンであった野口耕一(現シー・オー・シー代表取締役社長)は、デンマークの海外特許品である油圧トルクアクチュエータ(TA)を船舶や土木建機向けに拡販しておりました。その中で、当時の防衛庁技術本部から「高トルク(回転)が得られ小型・軽量であることからTAは潜水艦の駆動装置として最適」と高い評価を受け、昭和61(1986)年度計画潜水艦への採用を検討したいという申し出を受けます。TAは海外特許品であり、自衛隊艦艇に搭載する装備は国内製でなければならないという規定がありましたが、ちょうど国内での特許が半年後に切れることが分かり、野口は国内生産に向けて動き始めます。

 この時、協力を申し出たのが三菱重工業株式会社でした。デンマークで3カ月間の技術習得の後、三菱重工下関造船所で試作と検査を実施。さらに、防衛庁技術研究本部の立ち会いのもとで艦艇に要求される衝撃試験や破壊試験などの厳しい諸検査をクリアし、国産の油圧TAが誕生したのです。昭和61年度計画潜水艦への採用も決まり、大役を果たした安堵感に包まれていた昭和60(1985)年10月、野口は潜水艦建造を担当する三菱重工、川崎重工関係者と共に防衛庁技術研究本部に召集されました。

 海上幕僚監部担当者はその席上、「国内生産化されたTAは今後、潜水艦のみならず水上艦への採用も検討されTAの需要増が見込まれる」とした上で、「防衛庁の採用する製品は〝一物一価〟でなければならない」と説明しました。一物一価、即ちTAの販売価格は販売先によって変わることがあってはならない、というのです。そして、「TAの国産化実現の功労者である野口氏に、TAのコストおよび販売を取りまとめる会社を設立してもらいたい」との要請を受けたのです。
こうして昭和60年11月11日に株式会社シー・オー・シーを設立。三菱重工が製造するTAを一手に扱う専門商社として、歩みを始めたのです。