社長インタビュー

本気で話をしよう

 浄土真宗の御文の中に、「朝には紅顔ありて、夕には白骨となれる身なり」という一文がある。私は幼少期から、祖父母の影響で毎日のように読経させられていた。朝元気だった人が、夕方には死んでしまう。それが人間なんだと。その言葉の意味を知ったときに思った。「自分の生きたいように、生きよう」
 それ以来、自分が正しいと思ったことは、相手が社長だろうが取引先だろうが、ハッキリと主張してきた。そして、今の私がある。
 だから学生諸君が相手だろうと、いや、学生諸君だからこそ、ハッキリと包み隠さずに伝えたい。会社のこと。仕事のこと。そして私の考えを。
 できるだけ、分かりやすい言葉で話したつもりだ。もしかしたら、耳の痛い話もあるかもしれない。それでも、「この会社、何か面白そうだ」「社長の話を、もう少し聞いてみたい」と思ったら、ぜひ、話をしよう。
 私は、これまで夢中で働いてきた。そこで得てきた経験や知識を次の世代に余すところなく引き継ぎたいと考えている。だから、仕事に対して本気になれる人に来てほしい。私はそんなあなたに、全てを賭けて本気でぶつかっていく。

野口 耕一(のぐち こういち)
1949年、福岡市出身。福岡大学商学部卒。
大学卒業後、大手専門商社の山善に入社。人事部門、総務部門を経て、営業推進本部でデンマーク製の油圧トルクアクチュエータの拡販に携わる。その過程で海上自衛隊の潜水艦のバブル駆動用としての採用を目指す防衛庁の意向を受け、三菱重工などと協力して国内での製品化を進める。1984年9月、デンマークの大手機械メーカー・Danfoss(ダンフォス)にヘッドハンティングされ、日本ダンフォス製造の事業部長に就任。その後、トルクアクチュエータ国産化への尽力が認められ、防衛庁の要請を受けて1985年11月に、トルクアクチュエータを独占的に取り扱う商社として株式会社シー・オー・シーを設立する。

Q ズバリ、「シー・オー・シー」の強みとは?

他にないものを作っているオンリーワン企業ということじゃないかな。

Q 海上自衛隊の艦艇向け「油圧・電動油圧・電動アクチュエータ(駆動装置)」を中心に製造販売している「シー・オー・シー」の強みは何でしょうか。

A 業界における「オンリーワン」企業ということじゃないかな。わが社のアクチュエータやバルブ(配管内の水・空気・ガスなどの流れを制御する弁)は、商船や産業用機械などで使われているものとは異なる特殊品だからね。艦艇のアクチュエータは、簡単に言うとコンパクトで軽く、高性能なものが求められる。一般のマーケットにはないものを、細かな要求事項に沿って作っていかなければいけない。その過程で、特許もたくさん取っている。そうした技術を駆使して海上自衛隊の艦艇に特化した製品をメーンに開発・製造しているところが、他のメーカーにはない大きな強みだよ。

Q 他社が作れないものを作っている。特殊な製品だからこそ、経験がものを言うわけですか。

A まあ、長くこの世界に携わっていないとできない仕事だよね。私は会社設立以降、35年間この業界に関わっているから情報量は誰にも負けないし、艦艇にまつわる将来の展望についても防衛省幹部と普段から話をし、様々な提案をしている。

Q 競合企業というのは、あるのですか。

A ないよ。同じものを作っているところがないからね。もっとも、油圧機器を作っているところは上場会社だけで20社くらい、小さな会社も入れたら数百社ある。ただ、繰り返しになるけど、我々が作っているアクチュエータは海上自衛隊艦艇向けの特殊なもの。さらに、アクチュエータの遠隔操作装置やバルブなどの装備品も作っていて、それらをセットにして商品化している。装備品とその駆動装置・遠隔操作装置を全て作っているメーカーは、他にないと思うよ。
 防衛省との取引には厳しい審査があるから新規参入自体難しいけど、仮に他社が同じような製品を売り込みに行ったとする。でも、わが社の製品には多くの特許技術が使われているから、同じ技術が使われていたら特許に抵触しているということになるよね。審査の厳しい防衛省は、そんな「模倣品」は使わない。

Q 「シー・オー・シー」は、業界でどのような存在ですか。

防衛省にとっての、重要なサプライチェーン1社

Q 競合相手がいないわけですから、艦艇向け「アクチュエータ」の分野では唯一の存在だということですね。

A まあ、艦艇に搭載される装備はたくさん種類があるからね。全てには対応できない。ただ、少なくとも水上艦に関しては「ボール弁」とその駆動装置、遠隔操作装置を全て作っているし、潜水艦の「ボール弁」の駆動装置もわが社の製品が入っている。
 どんな業界でも国と取引するには、始めるまでが非常に大変だよ。ただ、この会社は当時の防衛庁から頼まれて作った会社だからね。国と取引することは、既定路線だったわけ。

Q その経緯を、教えてください。

A 昭和50年代後半、私は商社の営業マンとしてデンマーク製の油圧トルクアクチュエータを船舶や土木建機向けに拡販していた。その中で、この製品は軽量化・省スペース化に最適として防衛庁技術本部から評価された。「海上自衛隊の艦艇に搭載する装置は国産品であること」という規定があるため三菱重工と協力して試作し、防衛庁の厳しい検査をクリアして国産化に成功した。潜水艦への採用に向けて話が進んでいく中で、三菱重工などの関係者と共に防衛庁技術研究本部に召集され、「潜水艦で採用されると、今後は水上艦にも搭載されることになるだろう。そこで今回の国産化に尽力してくれた野口氏に、この製品の販売を取りまとめる会社を設立してほしい」と要請を受けて設立したのがこの会社だよ。その結果、三菱重工で製造したトルクアクチュエータは、すべてシー・オー・シーから防衛庁に卸された。その後、製造も自社で行うようになり、現在に至っている。

Q シー・オー・シーがなくなると、防衛省は艦艇に搭載するトルクアクチュエータが調達できない、ということですか。

A まあ、そうなるね。我々の作った製品は最終的に三菱重工などが造る水上艦や潜水艦に搭載されるわけだけど、そうした大手企業とも対等の立場で取引ができる。防衛省が「シー・オー・シーが潰れると困る」という立場だから、ぞんざいな扱いはできない。企業の規模じゃなくて、「どういう仕事をやっているか」「どういうものを作っているか」が大事だということさ。

Q 仕事をする上で、大切なことはなんでしょうか。

自ら学び、考え、行動すること。そういう人間しか、いらない。

Q 仕事の内容で言えば、国家防衛に携わる重要な仕事ですね。

A そのためにも、安全とはどういうものなのかということを、若い人にはよく考えてほしい。何のために各国は軍隊を持っているのか。国を守るということはどういうことか。災害活動では警察や消防も活躍するけど、国を守ることはできない。飛んでくるミサイルを、まさか拳銃で打ち落とすわけにはいかないからね。特に日本は周りを海に囲まれているから、海と空の備えがしっかりしていないと話にならない。
 もう少し踏み込んで言えば、30年後の日本は人口が8千万人まで減ると言われている。艦艇が運用されるのは40年間。すると4年後に引き渡す艦艇には、どういう性能が求められるか。人口が減れば当然、自衛官のなり手も減るわけだから、必然的に省力化・無人化しないといけない。そうした流れまで見越して開発や提案するのが、我々の仕事だよ。今の仕様のまま艦船を作ったら、40年後には運用できなくなる可能性が出てくるわけだから。

Q 普段から自分で、いろんなことを考えておかなければいけませんね。

A 国家防衛や人口問題といった広い視点も必要だけど、もちろん足元の製品のことも知っておく必要がある。そして、指示を待つ、教えられるのを待つのではなく、自ら勉強・研究する姿勢を持ってほしい。民間企業というものは、儲からなければ存在価値がない。儲かるためには顧客のニーズを汲み取って、それを製品開発に生かす必要がある。製品のことは社内のいろんな部署の人間に話を聞けば、すぐに分かる。その製品が艦艇のどこに使われて、どう運用されているか。現場では、どういうことで困っているか。そうしたことが分かってくれば、開発の道筋が見えてくるでしょ。自社で工場を持っているから、材料さえあれば試作品はいつでも自由に作れる。どんどんチャレンジしてほしいし、逆に言えばそういう人間しかいらない。
 シー・オー・シー(C.O.C.)という社名の由来は、“Community of Challengers”(挑戦者たちの共同体)。チャレンジ精神旺盛な人たちに、ぜひ来てほしいね。

Q 事業の収益性、経営の安定性についてはいかがですか。

普通なら100人規模でやる事業を20人でやっているから、利益率は高いよね。

Q それを20人程度の規模でやっている。ある意味、すごいことですね。

A 今やっている仕事を他社がやろうとしたら、まず100人規模で社員がいるよ。情報収集や新製品を企画するために多くの人手がいるからね。ただ、今はそれを私が一人でやっているわけだからすごく効率がいいし、利益率も他社より少しは高い。利益の中から研究・開発費に十分回すこともできるから、ニーズに応じた質の高い製品を提供し続けることができる。国の補助金なんか、もらったこともないよ。

Q これから社員は増やしていくのですか。

A 現在の売上高は7~8億円だけど、数年で間違いなく10億円前後になる。というのも、我々の仕事には製品の製造のほか、納入した製品を定期的に整備する仕事があるわけだけど、艦艇の省力化・無人化が進めば、納入する製品点数も増えてくる。納入する製品点数が増えればその分、定期的に整備をしなければいけないからね。整備の仕事が増えてくれば、今は私が見ている工場の開発設計・製造・機械加工の各部署に、責任者が必要になる。だから、現場の仕組みからコストまで把握し、効率的に現場を回せる人を採用し、いずれは現場を任せたいと思っている。そうやって、受注を増やしても十分に対応できる体制が整えば、必然的に売上高も増えていく。外注に出している仕事が内製化できれば、利益率も上がって社員の給与もさらにアップできる。

Q 入社後は、どのようなキャリアが積めますか。

やりたい仕事があれば事業計画を出せばいい。採算性があれば応援するから。

Q 入社後のキャリアは、どのようなイメージでとらえればよいですか。

A まずは自社の製品のことをしっかり勉強してもらうけど、そこから先は本人次第だよ。新たな製品の開発を進めるもよし、民間企業との取引拡大を図るもよし。まったく畑違いの事業でも構わない。本当にやりたい仕事があれば、その事業計画を持ってくればいい。これなら採算が合うと私を納得させられたら、その資金は出しますよ。事業を立ち上げるというのは、一つの会社を立ち上げるのと同じこと。うちはそうした経験が積める。私としても、そういうガッツのある人間を応援し、育てていきたい。

Q 最後に、これから当社を受験しようという人たちへメッセージをお願いします。

A 理系出身でもない私が、なぜ多くの特許を持つ製品を作れたか。それは、大企業の研究員や大学教授など、教えを請えば知恵を出してくれる〝応援団〟がいたから。だから若い人たちには、「年長者に可愛がられろ」と言いたい。年長者に師事すれば、短期間に様々な経験や知識を吸収でき、成長を加速させることができる。「男は愛嬌、女は度胸」と社員にはいつも言っているけど、少なくとも愛嬌があれば、年長者に可愛がられるでしょ。そこからいろいろ学べばいい。逆にいくら頭がよくても、人間的な魅力がなかったら誰も教えてくれない。

Q 素直に教えを請う心掛けが必要だと。

A 分からないことは、分からない、教えてくれませんかと言って、素直に教えてもらう。自分は有名大学を出て賢いと思っていたら大間違いだよ。学校で習うことなんて、たかが知れている。そのことをしっかりと肝に銘じてほしいね。
新たな製品の開発をしたい!
民間企業との取引拡大をしたい!
新機軸の事業を起こしたい!

私を納得させられたらキミの新規事業の資金は出しますよ